「メンズエステを開業したいけれど、個室型と派遣型、どちらを選ぶべきか分からない…」
この相談は、エスサポでも非常に多く寄せられます。開業資金や運営方針、リスクの取り方によって、最適な営業形態はまったく異なるからです。
一見すると「初期費用がかからない派遣型のほうが楽そう」と感じるかもしれません。
しかし、実際には収益性・トラブルリスク・ブランディングの方向性など、複数の要素を比較しなければ、後悔する選択になりかねません。
この記事では、個室型と派遣型、それぞれの収益モデル・法的リスク・運営上の特徴を徹底的に比較します。
さらに、どちらを選ぶべきかの判断軸についても、経営スタイルや資金状況別にわかりやすく解説していきます。
「どちらが良いか」ではなく、「あなたに合っているのはどちらか?」
その答えを、この記事の中で見つけてください。
そもそも「個室型」と「派遣型」はどう違うのか?
メンズエステの営業形態は大きく分けて、「個室型」と「派遣型」の2種類があります。
それぞれの違いを明確にしておくことで、後の判断がスムーズになります。

個室型メンズエステの特徴
個室型とは、自分で用意した店舗やマンションの一室などに施術スペースを構え、顧客を迎え入れるスタイルです。
最近では「ワンルーム型」や「1LDK型」といった呼び方もされ、完全個室での施術を行うケースが一般的です。
- 空間設計を工夫しやすく、内装や香りで「非日常感」を演出できる
- セラピストの待機スペースや着替え場所も確保できる
- リピーターの定着率が高い(「あの場所で受けたい」と思わせやすい)
その反面、家賃や内装費、光熱費などの固定費がかかるのが特徴です。
派遣型メンズエステの特徴
一方、派遣型はホテルやお客様の自宅にセラピストを派遣し、その場で施術を行うスタイルです。
施術ルームを用意しなくてよい分、コストを抑えて開業できるメリットがあります。
- 店舗を持たないため、初期投資が少なく済む
- 都心や繁華街ではホテル利用のニーズが高い
- 施術スペースの設営や維持管理が不要
ただし、移動距離や時間ロス、ホテル側からの利用拒否、クレーム対応の難しさなど、別種のリスクも存在します。
選ばれる背景と増加傾向の違い
都市部では、物件が豊富で交通の利便性も高いため、個室型の人気が高まっています。一方、地方や観光地では、店舗維持コストを抑えやすい派遣型が主流になる傾向があります。
また、「副業として始めやすいのは派遣型」「ブランディングに力を入れたいなら個室型」というように、事業目的やリソースに応じて選ばれる背景も変わってきます。
収益構造の違いと採算ラインの比較
「結局、どっちが儲かるの?」という問いに答えるには、それぞれの収益構造とコスト構造を正しく理解する必要があります。見かけ上の利益だけで判断すると、後から思わぬ経費やリスクで苦労することにもなりかねません。
個室型の収益モデルと費用構造
個室型では、施術の単価を高めに設定できる傾向があります。
理由は、「空間体験」や「プライベート感」が付加価値として評価されるからです。
- 60分コース:10,000〜14,000円
- 指名料・オプション料で客単価アップが可能
- リピーター率が高いため、売上が安定しやすい
ただし、以下のような固定費がかかります。
- 家賃(8〜15万円/月)
- 光熱費(2〜4万円)
- 内装費(初期費用で50〜150万円)
- 備品・消耗品(オイル・タオルなど)
損益分岐点が比較的高いため、月10〜15人の来客が最低ラインになるケースが多いです。
派遣型の収益モデルと費用構造
派遣型の最大の魅力は、初期費用と固定費が少ないこと。
- 物件契約や内装工事が不要
- 人件費や交通費がメインの支出
- 広告費に資金を集中しやすい
施術単価はやや低めで、60分あたり8,000〜11,000円ほどが相場。移動距離や待機時間を加味すると、セラピストの拘束時間あたりの収益性は下がりがちです。
また、交通費負担や、トラブル対応のコストも見込んでおく必要があります。

1ヶ月あたりの損益分岐点シミュレーション
以下は、ざっくりとした収支モデル比較です。
個室型:月間固定費 20万円/1回平均売上 12,000円
→ 月17人以上の来店で損益分岐点(週4営業/1日1〜2名)
派遣型:月間広告+交通費 10万円/1回平均売上 9,000円
→ 月12〜14件の派遣で黒字化(週5営業/1日1〜2件)
ただし、派遣型は“稼働できない時間”が多くなりやすいため、安定収益には工夫が必要です。
営業許可・法的リスクの違い
メンズエステの運営では、営業形態によって適用される法律や規制が異なります。これを見落としていると、突然の営業停止やトラブルに発展する可能性もあるため、事前に確認しておくことが非常に重要です。
個室型は「風営法のグレーゾーン」に注意
個室型サロンでは、店舗の構造や営業時間によっては風俗営業等の規制対象(いわゆる風営法)に抵触する可能性があります。
- 施術室が密閉空間(外から見えない)
- 異性による施術
- 深夜営業(23時以降)
これらの要素が揃うと、「第2号営業(マッサージなどを装った接客業)」と見なされるリスクがあります。
警察署の生活安全課に相談すれば、事前に指導を受けることができ、風営法の適用有無を確認できます。自己判断せずに“聞く”ことがリスクヘッジになります。
派遣型は「旅館業法・トラブル対応」の課題あり
派遣型の場合、施術場所が自分の管理下ではないことが大きな特徴です。そのため、以下のような問題が発生しやすくなります。
- ホテル側からの入室拒否(利用規約違反)
- お客様宅でのトラブル発生時の対応責任
- 旅館業法(宿泊施設内での営業活動に対する規制)
特にホテル利用時は、「ホテルと協定を結んでいない派遣」は禁止としているケースが増えています。派遣先のルールを調べておくこと、事前に了承を得ることが必要です。
どちらも“事前相談”が不可欠
個室型・派遣型いずれも、開業前に「自分の営業形態がどの法規制に該当するか」を必ず確認することが重要です。
- 警察署(風営法・風俗営業許可)
- 保健所(施設基準・衛生面)
- 弁護士や専門家(契約書・免責事項の整備)
最も危険なのは、「なんとなく大丈夫そう」で始めてしまうこと。開業支援サービスを利用する際にも、法的確認をセットで行うかチェックしましょう。

運営面・ブランディングの違い
メンズエステにおける「収益性」はもちろん重要ですが、どのようなブランド体験を提供できるかによっても、集客力やリピート率は大きく変わります。また、スタッフ管理の仕組みや運営体制も、営業形態によって特徴が異なります。
個室型は「空間体験」重視のブランディングが可能
個室型サロンの強みは、「空間=ブランド」として作り込める点です。
- 内装や照明、香りなどで高級感・安心感を演出
- BGMや待合スペースでリラクゼーションを強化
- お客様が“その場所”に愛着を持ちやすい
このような演出ができるため、顧客ロイヤリティが高まりやすく、指名・リピートが安定します。InstagramなどのSNS発信とも相性がよく、ビジュアルで差別化が可能です。
派遣型は「即応性・安心感」が評価の鍵
派遣型は施術空間を持たない分、セラピストの接客力・対応力がブランドの中核になります。
- 受付対応のスムーズさ
- 到着時間の正確さ(遅延への対応)
- セラピストの安心感・身だしなみ・丁寧さ
ユーザーが重視するのは「誰が来るか」「ちゃんと来るか」「安全か」。
スピード感と信頼性が、最大のブランディング要素になります。
スタッフ教育と管理体制に必要な工夫
運営スタイルにより、スタッフ管理の難易度も異なります。
- 個室型:出勤管理、空き時間の活用、制服や接客マニュアル整備
- 派遣型:待機場所の確保、移動手段・安全確保、GPSや連絡ツールの導入
とくに派遣型では、トラブル対応マニュアルや緊急連絡網の整備が求められます。個室型では、接客中の監督・モニタリングが難しい分、信頼性の高い人材確保が鍵になります。

どちらを選ぶべきか?判断基準とチェックポイント
ここまで個室型・派遣型の特徴を比較してきましたが、最終的に重要なのは、「自分に合った形を選ぶこと」です。どちらが優れているということではなく、「自分がどういう経営をしたいか」「どんな資源を持っているか」で選び方が変わってきます。
資金・立地・人材状況から選ぶ
営業形態を選ぶうえで、まず注目すべきは「初期資金」「立地」「人材確保のしやすさ」です。
- 資金に余裕がある → 個室型向き(内装や家賃負担に耐えられる)
- 資金が限られている → 派遣型向き(物件不要・小資本で開始可)
- 都市部で物件が取りやすい → 個室型の強みを活かしやすい
- 人材確保が難しい → 派遣型で少人数から試験運用
環境条件からのアプローチも、非常に合理的です。
性格・運営スタイルから逆算する
「どんな経営スタイルを望むか」も選択の大きな軸になります。
- お客様と密に関わりたい、自分で接客もしたい → 個室型が向いている
- 裏方に徹し、マネジメントや人材運用を重視したい → 派遣型に適性あり
- デザイン・空間演出が好き → 個室型でブランディングを展開しやすい
- 数字やデータで事業管理したい → 派遣型のスピード経営が合いやすい
自分の強みや性格に合わないモデルを選んでしまうと、開業後のストレスや不満が増えるリスクもあります。
「両立型」や「段階的導入」という選択肢もある
実は、個室型と派遣型を組み合わせる「ハイブリッド運営」や、段階的に切り替えていく方法も現実的です。
- 最初は派遣型でスタート → 売上が安定したら個室物件を確保
- 個室型をベースに → 深夜や地方エリアだけ派遣対応
- シフト制でスタッフの稼働を最大化(待機時間の最小化)
これにより、リスクを分散しながら収益機会を広げることが可能になります。

まとめ
メンズエステの開業において、「個室型」か「派遣型」かを選ぶことは、単なる営業形態の選択ではありません。
あなたがどんなスタイルで、どんな目的で事業を運営したいのかを反映する、経営戦略そのものです。
個室型は空間体験を武器にブランディングしやすく、固定ファンをつけやすい反面、初期費用や固定費の負担があります。一方で派遣型は低資本で始められ、機動力に優れるものの、移動やトラブル対応、ブランディング面での制約があります。
収益性、リスク、法的対応、ブランディング…。それぞれに強みと弱みがあるからこそ、自分の環境や志向に合わせた判断が必要です。
どちらを選ぶかで迷ったら、「まず小さく試してみる」という手もあります。
段階的に導入しながら、現場で学び、自分にとっての最適解を見つけていく。
そんな柔軟な姿勢こそが、長く続く店舗運営への近道ではないでしょうか。