「黒字化って、結局どれくらい売り上げればいいの?」
「月商100万円って現実的なの?理想論じゃないの?」
——そんな疑問をお持ちのメンズエステ店経営者は少なくないはずです。
実際、SNSやセミナーで語られる“成功例”の多くは、詳細な内訳が不透明なことも多く、自分の店舗に当てはめられるかどうかが見えにくいのが現実です。
だからこそこの記事では、実際の店舗運営データと経営指標をもとにした「黒字化シミュレーション」を公開します。
- 月商100万円で黒字になるのはどんな条件?
- どんな構成、稼働率、単価なら実現可能なのか?
- そもそも損益分岐点ってどうやって計算するの?
こうした疑問に、数字で答えながら、自店に置き換えて考えられるシミュレーションと改善アクションをお伝えします。

なぜ黒字化の目標ラインは「月商100万円」なのか?
「黒字」とは、単に売上が上がったという話ではなく、必要経費をすべて差し引いても利益が残る状態を意味します。
ではなぜ、多くのメンズエステ経営者が“月商100万円”をひとつの目安にするのでしょうか?
実務上の分岐点として現実的
メンズエステの運営には、一定の固定費(家賃・広告費・光熱費など)と、変動費(歩合給・オプション原価など)が必ず発生します。
この全体の支出をカバーしつつ、「自分の報酬」や「内部留保」を確保できる現実的なラインが、おおよそ月商100万円前後なのです。
もちろんエリアや規模によって差はありますが、一人or二人運営体制のサロンにとっては“到達できる現実的な目標”として、ちょうど良い水準といえます。
固定費・変動費を吸収するには月商80〜110万円が基準
実際に全国の運営データを集計すると、損益分岐点は月商80〜110万円の間に集中しています。
- 都心部(家賃高):月商110万円でも利益が少ないことも
- 地方都市(人件費低):月商80万円でも黒字化可能な例もあり
このように、月商100万円は“目指すべき指標”であると同時に、“最低限黒字を意識する基準”でもあります。
まずはコストを「固定費」「変動費」に分けて把握する

黒字化を目指すうえで、まず必要なのが支出の正確な分類と把握です。
多くの経営者がやりがちな失敗は、「ざっくり売上だけを追ってしまう」こと。ですが、利益を出すためには“何にいくら使っているか”を明確にすることが不可欠です。
固定費(毎月必ずかかる支出)の目安
固定費とは、「売上がゼロでも発生する支出」です。たとえば:
- 家賃:10万円〜25万円(エリアによる)
- 電気・水道・消耗品:2万円前後
- 広告費(運用型広告、ポータルサイト):5〜15万円
- スタッフの最低保証給:10〜30万円(1〜2名体制)
- その他(備品、通信費など):1〜3万円
小規模運営でも、月あたり30〜50万円程度の固定費はかかるのが一般的です。
変動費(売上に応じて変わる費用)の目安
変動費は、施術が入るごとに発生する支出。主に以下のようなものです。
- 歩合給(売上の45〜60%が相場)
- オプション料の分配
- オイルや消耗品の使用量
- 指名料のインセンティブ
たとえば売上10,000円の施術が1本入ると、そのうち5,000〜6,000円が人件費として消えていくわけです。
つまり、稼働が増えるほどコストも比例して増えるのが変動費の特徴です。
“1日あたりいくら稼げばいいか”が明確になる
月単位だけでなく、「1日いくら稼げば損益が合うか」を算出することで、営業日の売上目標が具体化されます。
例)
固定費:40万円/月
営業日:25日
→ 1日あたり固定費 = 16,000円
これに変動費(施術1本あたりコスト)を加えると、1日2〜3本の稼働で**ようやく“トントン”**ということも珍しくありません。
黒字化シミュレーション:モデルケースの紹介

ここでは、実際の店舗データを元にした3つの営業スタイル別モデルケースを通じて、「月商100万円を達成するには何が必要か?」を具体的にシミュレーションしてみましょう。
ケースA:1名体制・週5営業・平均単価12,000円
【前提条件】
- 営業日数:月22日
- 1日平均施術本数:4本
- 客単価:12,000円
- 月間売上:12,000円 × 4本 × 22日 = 105.6万円
【支出内訳(概算)】
- 固定費:40万円
- 変動費(歩合55%):58万円
- 利益:105.6万 - 40万 - 58万 = 7.6万円の黒字
【ポイント】
- フル稼働すれば黒字には届くが、少しのキャンセルや空きで赤字に転落するギリギリの構造。
ケースB:2名体制・シフト交代制・平均単価10,000円
【前提条件】
- 営業日数:月26日
- 1日施術数:6本(2人で3本ずつ)
- 客単価:10,000円
- 月間売上:10,000円 × 6本 × 26日 = 156万円
【支出内訳(概算)】
- 固定費:50万円
- 変動費(歩合50%):78万円
- 利益:156万 - 50万 - 78万 = 28万円の黒字
【ポイント】
- 人数を増やす分、固定費は上がるが稼働枠も倍増するため効率的。
- 稼働をシェアできるので、スタッフ負担も軽減される。
ケースC:繁忙時間帯特化型(短時間高単価戦略)
【前提条件】
- 営業時間:1日4時間(夕方〜夜のみ)
- 客単価:15,000円
- 1日施術数:3本
- 営業日数:25日
- 月間売上:15,000円 × 3本 × 25日 = 112.5万円
【支出内訳(概算)】
- 固定費:38万円(小規模運営)
- 変動費(歩合60%):67.5万円
- 利益:112.5万 - 38万 - 67.5万 = 7万円の黒字
【ポイント】
- 営業時間を絞って集中施術。高単価・短時間で黒字ラインを突破できるモデル。
損益分岐点を超えるために必要な「指標」と「対策」

黒字化に必要な数字は、売上だけではありません。日々の営業でチェックすべき“KPI(重要指標)”を明確にし、それに基づく具体策を立てることが、持続的な黒字経営への鍵です。
KPI①:1人1日平均の稼働数(目安3〜4本)
多くのメンズエステ店では、1人1日あたり3本の施術が損益分岐点の基準となります。
- 1〜2本:赤字もしくはトントン
- 3本:固定費をカバー、変動費とほぼ相殺
- 4本以上:利益ゾーンに突入
稼働が伸びない理由は、空き時間の埋まりにくさや、キャンセル対策の不備にあることも。
→ 予約リマインド、当日割、前日予約強化などで、埋まり率を向上させましょう。
KPI②:平均単価の底上げ(オプション活用)
同じ施術本数でも、単価が1,000円上がるだけで月5万円以上の差になります。
- オプション販売のトーク設計
- 限定コースの訴求
- 施術後アンケートで需要調査
などを活用して、意図的に単価を引き上げる施策が必要です。
KPI③:リピート率と再来頻度の管理
新規顧客の獲得ばかりに目を向けがちですが、利益の源泉はリピーターです。
- リピート率70%以上
- 再来までの間隔:2週間以内が理想
- 予約時点で次回案内できているか?
→ 「会う前」より「会った後」に仕掛けを作ることが、再来頻度の安定につながります。
黒字経営を実現する5つの収支改善アクション

黒字ラインが見えてきたら、次は実際に数字を動かすアクションが必要です。
ここでは、今すぐ取り組める5つの改善施策を具体的に紹介します。
1. 非稼働時間の見直しと“1本でも多く”戦略
非稼働時間の放置は、最ももったいない赤字要因です。
- 空き時間に合わせた“当日割”導入
- 「15時以降限定オプション」など時間帯特化型コース
- 当日キャンセル枠をLINEで即時案内
少しでも稼働本数が増えれば、変動費の範囲内で利益を増やすことが可能になります。
2. 固定費の最適化(とくに広告費と家賃)
「家賃が高い方が集客できる」「広告は多く出した方が安心」
——そんな思い込みは、黒字経営にとってはリスクです。
- 物件の立地と来店導線が見合っているか?
- 広告費は費用対効果が取れているか?
→ 毎月の経費を“ゼロベースで見直す”クセをつけることが大切です。
3. オプションメニューの「売れる導線」設計
単価アップは、オプション販売の設計次第。
- 施術前に“ご褒美感”を刺激する紹介トーク
- 組み合わせ例を提示(例:「このオイル×この時間が人気です」)
- 回数券やまとめ割の案内
→ 単価が上がる=1本あたりの収益効率が高くなるので、少ない稼働でも利益が出せる体制が整います。
4. LINE・DM・再来の“種まき”施策
再来率を上げるには、「来た人をもう一度呼び戻す」工夫が不可欠。
- LINEで施術後にお礼+次回空き状況案内
- DMで「◯回目のご来店ありがとうございます」などの感謝施策
- ポイントカードやスタンプ特典の導入
→ 固定客が増えれば、月商が安定し、広告費も削減できます。
5. KPIモニタリングと週単位の収支管理
最後のカギは「見える化」です。
- 週ごとの売上、稼働本数、単価を記録
- 損益分岐点との乖離を可視化
- 週末ミーティングで進捗確認&戦略修正
→ “毎日売上を見ない経営者”は、黒字化が遠のくというのが現場の実感です。
まとめ
メンズエステ経営で「黒字化」を実現するには、ただ頑張るだけでは足りません。
感覚ではなく、数値と構造に基づいた経営判断が不可欠です。
本記事で紹介したように、
- 月商100万円は現実的な黒字ライン
- 固定費と変動費を正確に把握すること
- 損益分岐点を超えるためのKPI管理
- モデルケースに基づいた収支バランスのシミュレーション
- 実行可能な5つの収支改善アクション
これらを日々の運営に組み込むことで、「頑張ってるけど赤字」「忙しいのに利益が出ない」といった状態から脱却できます。
最初から完璧でなくてもかまいません。まずは「数字を見る習慣」から始めること。
そこから、黒字経営への第一歩がスタートします。